淡海万葉の会建立の歌碑

淡海万葉の会では発足当時より万葉集全般の知識等の理解・習得に加え、万葉歌碑の建立10基を目途に活動を続けて参りました。平成20年には田辺聖子氏(文化勲章受賞者)、俵万智氏(詩人)、佐佐木幸綱先生、小野寛先生、坂本信幸先生等の著名な万葉関係の皆様の揮毫を得て、8基を建立。揮毫を得られなかった2基については、凡そ10年後の昨平成29年11月に中西進先生(万葉学者 文化勲章受賞者)、嘉田由紀子氏(元滋賀県知事)の揮毫をいただくことになり、建立歌碑は併せて10基となりました。以前の歌碑8基の本体には副碑を添えていますが、今回の2基についても同様に副碑に邦文(日本語)、英語、中国語、ハングルで解説文を付しています。

(1)平成29年(2017年)11月建立分
①巻2ー152  舎人吉年(とねりのきね)揮毫 中西進(万葉学者 文化勲章受賞者)
やすみししわご大君の大御船(おおみふね)待ちか恋ふらむ志賀の辛崎
(歌意)中西進 あまねく国土を支配なさったわが大君の御船、その帰りを待ち恋うて(こがれて)いるだろうか、志賀の辛崎は。
(解説)中西進 天智天皇は未曽有の国難の中で国家建設に尽瘁された。崩御の時、天智四(671)年十二月に営まれた葬儀の場で側近に仕えていた舎人吉年が慟哭の中に天皇の蘇生を願い、唐崎が喪船の帰還を待ち望んでいると歌った。後年、歌聖柿本人麻呂は、この一首に基づいて近江の荒都を傷んだ。
(英語)リービ英雄(小説家・日本文学者)Does Cape Kara in Shiga wait in longing for the imperial craft of our Lord、sovereign of the earth’s eight corners?

②巻2ー115  但馬皇女(たじまのひめみこ)揮毫 嘉田由紀子(元滋賀県知事)
後(おく)れ居て恋ひつつあらずは 追ひ及(し)かむ 道の隈廻(くまみ)に標(しめ)結(ゆ)へ我が背(せ)
(歌意)花井しおり(万葉研究者 人間環境大学教授)都に残って恋しく思っているよりは、追いかけて行きたい。道の曲がり角に印をつけておいて下さい、あなた。
(解説)花井しおり 但馬皇女は、高市皇子(たけちのみこ)の許に居ましたが、穂積皇子(ほずみのみこ)に思いを寄せていました。しかし、穂積皇子には近江国の山寺(崇福寺)行きの命が持統天皇から下されてしまいました。皇子との別れに際して皇女が詠んだ歌。
(英語)リービ英雄(小説家・日本文学者) Poem by Princess Tajima when Prince Hozumi was ordered by imperial command to the mountain temple at Shiga Rather than being left behind and longing,I would go catch up with you.Tie your signs to the bends of the road,my man!